遺産分割
相続人同士で揉めているわけでもないのに、「遺産分割協議書」という堅苦しい書類を作る必要があるのか、と思う方は多いのではないでしょうか。
結論から言うと、遺産分割協議書は必ず作らなければならない書類ではありません。ただし、手続きによっては、揉めていなくても必要になります。この記事では、作らなくてよい場合と、作るべき場合を整理します。
遺産分割協議書は、相続人全員で話し合って決めた遺産の分け方を、書面にしたものです。相続人全員が署名し、実印を押して、印鑑証明書をつけるのが一般的です。
法律上、遺産分割の話し合いは、相続人全員が合意すれば成立します。書面にしなければ無効になる、という決まりはありません。遺産分割協議書は、その合意の内容を、銀行や法務局、税務署などに示すための書類です。
相続人が1人しかいなければ、分け方を話し合う必要がないため、遺産分割協議書はいりません。
遺言で、誰が何を相続するかがはっきり決められていて、そのとおりに分ける場合は、遺言書を使って手続きをします。遺産分割協議書はいりません。
不動産を、法律で決められた割合(法定相続分)のまま、相続人全員の共有として登記する場合は、法務局の案内でも遺産分割協議書は不要とされています。ただし、共有のままにしておくと、将来売るときなどに全員の同意が必要になるため、注意が必要です。
預貯金の相続手続きでは、多くの金融機関が、独自の「相続手続依頼書」などの書類を用意しています。この書類に相続人全員が署名し、実印を押し、印鑑証明書をつければ、遺産分割協議書がなくても手続きできることが多いです。
ただし、金融機関ごとに必要な書類は違います。手続きの前に、口座のある金融機関に確認してください。
たとえば、遺言がなく、相続人全員の話し合いで「実家は長男が1人で相続する」と決めた場合、その内容で相続登記をするには、原則として遺産分割協議書と、相続人全員の印鑑証明書が必要です。
ただし、遺言書や家庭裁判所の調停調書など、別の書類をもとに登記する場合は異なります。
不動産がある相続では、揉めていなくても、遺産分割協議書を作ることがほとんどです。相続登記は、2024年4月から義務になっています。
相続税の申告で、配偶者が相続した財産について税金を軽くする制度(配偶者の税額軽減)を使う場合は、配偶者が取得した財産を示す書類が必要です。相続人の話し合いで分け方を決めた場合は、遺産分割協議書の写しと、押印した相続人全員の印鑑証明書を提出します。遺言書などで取得した財産を示せる場合は、協議書がいらないこともあります。
また、相続税の申告期限(亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内)までに分け方が決まっていない財産には、原則としてこの制度を使えません。ただし、所定の手続きをしたうえで申告期限から3年以内に分けるなど、例外的に使える場合もあります。相続税がかかりそうな場合は、期限を意識して話し合いを進める必要があります。具体的な税額や特例の使い方は、税理士にご相談ください。
銀行や証券会社がいくつもある場合、それぞれの用紙に相続人全員が署名・押印するのは大きな手間です。遺産分割協議書を1通作っておけば、多くの手続きで同じ書類を使えるため、相続人が何度も集まったり、書類を郵送し合ったりする負担を減らせます。
手続き上は必要がない場合でも、遺産分割協議書を作っておくと、次のような点で安心です。
行政書士は、相続人全員が合意した内容にもとづいて、遺産分割協議書を作成できます。戸籍を集めて相続人を確定するところから、財産の一覧(財産目録)の作成、金融機関や法務局で使える形の協議書づくりまで、まとめてお手伝いできます。なお、不動産の相続登記の申請の代理は司法書士などの業務で、行政書士は代理できません。戸籍の集め方は「法定相続情報証明制度とは」でも説明しています。
ただし、相続人の間で分け方について意見が分かれ、交渉が必要な場合は、弁護士の領域になります。行政書士に頼めることは「相続手続き、行政書士に頼めること・頼めないこと」で整理しています。
遺産分割協議書は、すべての相続で必要になるわけではありません。大切なのは、ご家族の状況や必要な手続きに合わせて、無理なく相続を進めることです。
遥か行政書士事務所では、遺産分割協議書が必要かどうかの確認から、ご家族で合意した内容の書面作成までお手伝いします。
参考(法令・公的機関の情報)
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