生前対策・終活
年齢の近い2人が養子縁組をして、法律上は「親子」になっていると聞いて、驚いた方もいるかもしれません。
日本では、同性のカップルは結婚(婚姻届の提出)ができません。そのため、パートナーに財産を残したい、家族として扱われたいと考えて、養子縁組を選ぶカップルがいます。
日本の養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類があります。普通養子縁組では、実の親との親子関係を残したまま、新たに養親との親子関係が生まれます。一方、特別養子縁組は、子どもの福祉のために家庭裁判所の審判によって成立する制度で、原則として実の親との法律上の親子関係が終了します。
この記事では、成人したパートナー同士が利用することのある「普通養子縁組」について、仕組みと相続での扱い、利用する前に知っておきたい注意点を説明します。
成人同士の養子縁組(普通養子縁組)の主な要件は、次のとおりです。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 養親の年齢 | 20歳以上であること |
| 養子との関係 | 養子が、養親より年上でないこと。また、養親の親や祖父母など目上の親族(尊属)でないこと |
| 手続き | 市区町村役場に養子縁組届を出す |
法律には「何歳以上離れていなければならない」という決まりはありません。そのため、年齢差が小さくても、年齢に関する要件は満たせます。成人を養子にする場合は、原則として家庭裁判所の許可もいりません。
ただし、年齢の要件を満たせば必ず縁組ができるわけではありません。実際に縁組が成立するには、法律上の親子関係を成立させる意思が必要です。相続などの目的があるからといって、直ちに無効になるわけではありませんが、親子関係を成立させる意思がなかったと判断されれば、縁組が無効になる可能性があります。また、養親や養子に配偶者がいる場合の同意など、ほかにも要件があります。
養子は、縁組の日から養親の子として扱われます。普通養子縁組では、実の親との親子関係もそのまま続きます。そのため、相続では次のようになります。
つまり、どちらが先に亡くなるかによって、相続の結果が大きく変わります。年上の養親が先に亡くなれば養子が相続人になりますが、年下の養子が先に亡くなった場合は、養親は養子の実の親と一緒に相続することになり、財産をすべて受け取れるとは限りません。
なお、相続税では、養子は原則として、財産を受け取ったときの税額が2割加算される対象になりません。一方で、配偶者だけが使える税額の軽減は、養子というだけでは使えません。相続税の計算にはほかにも条件があるため、具体的な税額は税理士にご確認ください。
養子縁組をすると、法律上の親子として、相続以外にも次のような効果があります。
養子縁組は、パートナー関係を証明するだけの制度ではなく、法律上の親子になる制度です。結婚と同じ権利がすべて得られるわけではないことも、理解しておく必要があります。
養子縁組は、話し合い(協議離縁)などで解消することができます。ただし、一度養親子の関係になった2人は、離縁した後でも結婚できないと法律で決められています。
将来、同性のカップルの結婚が法律で認められた場合でも、養子縁組をしたことがある2人は結婚できない可能性があります。この点は、同性カップルの養子縁組の問題点としてよく指摘されています。
なお、同性のカップルの結婚を認めていない今の法律が憲法に違反するかについては、最高裁判所で審理が進められています。今後の判断や法改正の動きに注意が必要です。
養子縁組によって養子は養親の子となるため、養親の相続では、養親の親や兄弟姉妹よりも養子が優先されます。また、養子と養親の親族との間にも法律上の親族関係が生まれるため、相続や扶養など、それぞれの家族にも影響が及ぶことがあります。事前に家族の理解を得ておくことも大切です。
パートナーに財産を残したり、もしものときに支えてもらったりする方法は、養子縁組だけではありません。
| 方法 | できること | 注意点 |
|---|---|---|
| 遺言 | パートナーに財産を残す(遺贈) | ほかの相続人の遺留分に配慮が必要。受け取る人が配偶者や一親等の血族などに当たらなければ、原則として相続税が2割加算される |
| 任意後見契約 | 判断能力が衰えたとき、パートナーに財産管理などを任せる | 公正証書で結ぶ必要がある |
| 死後事務委任契約 | 葬儀や役所の手続きなどをパートナーに任せる | 死亡届は、契約の受任者というだけでは出せない |
| パートナーシップ制度 | 自治体がパートナー関係を証明する | 相続などの法律上の効果はない |
自治体のパートナーシップ制度は、住宅の入居や病院での面会などで考慮されることがありますが、相続人になれるわけではありません。パートナーに確実に財産を残すには、遺言などで備えておく必要があります。
養子縁組をするかどうかは、2人の年齢や家族との関係、将来どうしたいかによって変わります。行政書士は、遺言書の文案や、任意後見契約・死後事務委任契約の文案作成をお手伝いできます。養子縁組を含めてどの方法が合っているか、整理するところから一緒に考えます。
ただし、家族との間ですでに争いがある場合は、弁護士の領域になります。行政書士に頼めることは「相続手続き、行政書士に頼めること・頼めないこと」で整理しています。
大切な人と、これからも安心して暮らしていくための備え方は、一つではありません。遥か行政書士事務所は、お二人の思いを伺いながら、遺言や任意後見など、お二人に合った形を一緒に考えます。
参考(法令・公的機関の情報)
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